令和8年4月1日から不動産の登記名義人の住所氏名変更登記が義務化されることとなりました。
住所氏名変更登記の義務化は相続登記の義務化の陰に隠れてご存じでない方も多いかと思われますので今回は住所氏名変更登記が義務化となった背景及び義務化の注意点について書かせていただきます。
住所氏名変更登記が義務化となった背景
これまで住所氏名変更登記は義務ではなく、それを行うかどうかは名義人本人の意思に任せられてきました。
住所氏名変更登記が必要とされる場面は不動産を売る際の名義人が引っ越しをしていた場合に売買の移転登記の前提として行うくらいで、時間と費用が掛かる中、やらずに放置してしまう事案が結構な数に上りました。
国土交通省の調査によれば、全国の土地のうち所有者不明土地は24%で、発生原因の33%を「住所変更登記の未了」が占めています。
具体的に申しますと九州全土の面積に匹敵する所有者不明土地があり、その内の33%が住所氏名の不明が原因となっているイメージです。
不動産の名義人が住所変更登記をせずに放置をしてしまうと困ったことが起こります。
例えばその不動産を購入したい第三者が現れたとしましょう。
その第三者は不動産登記簿で「この不動産は何処の誰が所有している」と認識し連絡を取ってみよう考えるのですがそもそも登記簿上の住所を元に所有者と連絡を取るのですから
現住所と登記簿上の住所が異なるとその第三者はこの時点で何処に連絡を取ればよいかわからなくなります。
他の例としては今にも崩れそうな建物があったとします。
その建物の隣家に住んでいる人がこの事態を憂い問題解決のためその建物の名義人に連絡を取りたい場合に連絡が取れなかったり等があります。
このままでは不動産登記制度の目的である
「不動産取引の安全及び迅速性に資すること」
が果たせなくなります。
また不動産の管理者責任を負う者等の特定も出来ず、国はこれを改善すべく相続登記義務化と併せて住所氏名変更登記を義務化するに至ったのです。
住所氏名変更登記義務化の注意点
さてそれでは実際に住所氏名変更登記の義務を負う者は誰なのか。
また住所氏名変更登記をしないとどうなるかについて記していきます。
まず住所氏名変更登記の義務化の対象となる者とは土地及び建物の所有権の登記名義人である自然人及び法人となります。
自然人は生物学上の人で、法人とは株式会社等のことを言います。
住所氏名変更登記義務化の法律施行後、いつまでに住所氏名変更登記をしなければいけないか。
これは施行時点で住所氏名が変わっていた場合は施行から2年以内に、施行後に変わった場合には変わった日から2年以内に住所氏名変更登記を行わなければならず、正当な理由なくこの期限内に、変更登記を行わないと5万円以内の過料の対象となります。
過料とは金銭を徴収する制裁のことです。
まとめ
・現状、住所氏名変更登記がされていない不動産が多く、所有者が不明となっている土地が増え、不動産取引その他の場面で問題となっている。
・住所氏名変更登記義務化の法律は令和8年4月1日で施行時点で住所氏名が変わっている場合は施行から2年以内に、施行後に変わっている場合は変わった日から2年以内に変更登記をしなければ、5万円以下の過料の対象となる。
私自身お客様と接する機会が多いですが住所氏名変更登記の義務化は相続登記の義務化の陰に隠れて知らないという方が多く、まだまだ周知されていないのが現状かと思います。
この記事がきっかけとなり住所氏名変更登記も義務化となることを知っていいただき、この記事をお読みいただいた皆様の一助となれば幸いでございます。
司法書士法人ファミリア
司法書士 杉本 啓太
こちらのコラムは業務提携先である愛知宅建サポート株式会社さまからのご依頼でファミリアの司法書士が執筆したものです。
掲載元:空き家管理ポータルサイト
(公社)愛知県宅建協会運営の不動産情報サイト
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